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第1部 二章【闇メン】その4 第伍話 年齢は無意味

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-10-28 18:30:00

25.

第伍話 年齢は無意味

 ブーーー、ブーーー、ブーーー、

 マナーモードのケータイが椎名のポケットの中で揺れる。渡邉からの連絡だ。

「はい」

『おつかれさん。どうだった今日は?』

「いきなり工藤さんに数え役満振って飛びましたが最終的には勝ちました」

『ほお、さすがだな。何か連絡事項はあるか?』

「とくにないですね。あ、神戸さんていう綺麗な方と同卓しました。プロ雀士の姉って言ってましたけど渡邉さん知ってますか?」

『おお、神戸蘭が来てたのか。あれは杜若茜(かきつばたあかね)って言う女流雀士の姉だよ。強かったろ』

「強かったですね。ていうか、杜若茜…… 苗字違くないですか? リングネーム的な?」

『本名だよ。既婚者だからな』

「どっちがですか?」

『蘭が』

(終わったーー……)

『なんだ椎名くん、狙ってたのか? ま、蘭は美人だからなぁ。でもかなり歳上だぞ?』

「いくつですか?」

『多分もう40近くになったんじゃねえかな、まだ30代後半だとは思うが』

「えっ…… 見えない」(20代後半くらいかなと思ってた)

『女の年齢は見た目じゃわからんよ。まあ、年齢なんて意味はないんだけどな』

「意味がない?」

『そうだろ? 年齢なんてのはあとどれくらい命が残ってるかとか子供は産んでも母体は平気かとかいう予想をするためのデータでしかない、それも個人差あるしな。はっきり言ってあまり知る必要ないんだよ』

「それは確かにそうかも……」

『俺なら、惚れたなら結局その女が何歳だとかは関係ないかもな。まあ、蘭は既婚なわけだが…… ちなみに妹の茜も蘭とそっくりの美人だから検索して見てみな』

「へー。あとで見てみます」

『じゃあ、今日は勝ったなら今日の分の給料はまだ渡さなくていいか?』

「そうですね、手持ちは足りてます」

『わかった。また明日も頼む。明日の行き先は決まり次第メールするから少し待ってくれ。22時までには必ず連絡する』

「分かりました。それではお疲れ様でした」

『おう、お疲れ様。じゃあな』

 電話を切ると椎名はさっそく『杜若茜麻雀』で検索してみた。

(あ、この人か、たしかに似てるな。杜若茜さん。独身かあ)

 別に神戸蘭が既婚だろうと杜若茜が独身だろうと何も関係ないくせに、椎名という奴は本当にバカな男であった。

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